借金が多額になってしまったことで債務整理を行う必要が出てしまった…そのような場合、司法書士や弁護士など法律の専門家に依頼することが一般的です。
しかし、そもそもどのような債務整理があるのか、どの債務整理を行ったらよいのか分からない人もいるのではないでしょうか。
また、司法書士と弁護士の違いが分からず、どちらに依頼するほうが良いのかも判断に迷いがちなポイントです。
ここでは、債務整理を司法書士に依頼する場合の特徴などを弁護士に依頼する場合と比較しながら、詳しく解説しています。
債務整理を検討している人は、是非参考にしてください。
- 債務整理は任意整理、個人再生、自己破産の3つがある
- 司法書士の業務は司法書士法で定められている
- 債務整理において平成14年より司法書士の権限が拡大した
- 司法書士が任意整理、過払金請求で対応できる金額は140万円以下
- 任意整理はわずかだが司法書士に依頼したほうが安価で済む傾向
- 個人再生の費用は司法書士、弁護士に大差はない傾向
- 自己破産では同時廃止事件の場合、司法書士に依頼したほうが安い傾向
債務整理は任意整理、個人再生、自己破産の3つ|それぞれの特徴を解説
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
それぞれ特徴があり、向き不向きがありますが、事前にどの債務整理にするか決めておく必要はありません。
司法書士や弁護士に債務整理したい旨を伝えると、借入内容の聞き取りや借り入れに至った経緯、現在の収支、財産状況などを聞いた上で最適な債務整理を提案してくれます。
どの司法書士や弁護士であっても、強引に手続きさせるということはありません。
分からない点や納得がいかない点などは質問して、納得した上で依頼するようにしましょう。
任意整理では直接貸金業者と交渉|裁判所が関与する特定調停もある
任意整理とは、今後の返済計画に基づいて将来の利息のカットや長期分割返済などの和解を結び、支払いを楽にする手続きであり、債務整理の中で最も利用されている方法です。
任意整理の際に、適正な借入残高を算出する必要があるため、過払金請求を併せて行うことも多くあります。
過払金とは、平成22年6月17日以前の借り入れで、利息制限法で定められている金利を超えて支払った利息のことであり、完済後でも10年以内であれば貸金業者に返還請求できます。
過払金請求を伴う任意整理では、まず利息制限法による引き直し計算で算出された利息の過払い分を、元本に充当して借入残高を減らします。
過払金充当後の借入残高に対し以下のような交渉を行います。
- 将来の利息カット
- 3~5年程度での分割返済
- 可能であれば一括返済の代わりに元本のさらなる減額
- 発生している場合は遅延損害金の減額
将来の利息カットや長期分割返済は、貸金業者も認めてくれることが多いのですが、元本の減額には応じてもらえることは少ないため、任意整理は個人再生や自己破産と比べ元本を減らす効果は低くなります。
交渉が成立することを和解といい、交渉が成立した証として和解契約を締結すると任意整理の手続きは完了、指定された日より返済を開始します。
任意整理では裁判所は関与せずに、債務者が貸金業者と直接交渉するため、収入や資産を証明する資料などを準備する必要がなく、個人再生や自己破産と比べ手続きが簡単です。
また、一部の借入先のみの任意整理も可能です。
長期分割返済で毎月の負担額を軽減させられますが、3~5年で分割返済できることが必要であり、目処が立たない場合は任意整理できないこともあります。
例えば、毎月の収支が3万円の黒字である場合、借入総額は3万円×60カ月(5年)=180万円以内でなければ、和解が成立できる可能性は低くなります。
交渉は債務者本人でも可能ですが、一般的には弁護士や司法書士に依頼します。
一方で、債務者本人が簡易裁判所に申し立て、調停委員主導で債務整理を行う特定調停というものもあります。
特定調停でも過払金がある場合は利息の引き直し計算を行い、過払金を元本に充当し、長期分割返済の交渉を行う点では、任意整理と同じです。
しかし、以下の点においては任意整理と違います。
- 簡易裁判所への書類提出、出廷が必要である
- 直接貸金業者との交渉ではなく、調停委員主導で行われる
- 過払金が借入残高よりも多い場合でも、返金請求別途必要
- 強制執行を停止できる
長期の延滞により、貸金業者から給与の差し押さえなど強制執行が行われることがありますが、特定調停ではその強制執行の取りやめも可能です。
特定調停と併せて強制執行停止の申し立てを行い、裁判所に必要と判断されたときは、強制執行は停止となります。
任意整理には強制執行停止の効力はないため、給与差し押さえなどで切羽詰まった状況であれば、特定調停の申し立ての方が適しています。
ただし、特定調停が成立した際に作成される調停調書は、裁判所の判決と同じ法的拘束力を持つため、滞納した場合は直ちに財産を差し押さえられます。
成立後の書類 | 法的拘束力 | 開始前の強制執行 | 成立後に滞納した場合 | |
---|---|---|---|---|
任意整理 | 和解書 | なし | 停止できない | すぐに差し押さえされることはない |
特定調停 | 調停調書 | あり | 裁判所が認めれば停止できる | すぐに差し押さえされる |
個人再生は小規模個人再生と給与所得者再生手続きの2種類|民事再生法に基づき行われる
債務整理の個人再生とは、地方裁判所に返済能力がないことを認めてもらい、借金を大幅に減額してもらう方法です。
個人再生は民事再生法に基いて行われ、大きく分けて小規模個人再生と給与所得者再生手続きの2種類があります。
どちらの個人再生でも自己破産と違い、自宅や車など一定の財産を所有したまま手続きできる点も大きな特徴です。
- 自宅や車など一定の財産を残せる
- 借金の元本部分の大幅な減額が望める
- 借金の理由は問われない
- 官報に記載されるが、就業制限はない
- 強制執行停止ができる
- 個人信用情報機関に登録される
小規模個人再生と給与所得者再生手続きの違い
小規模個人再生 | 給与所得者再生手続き | |
---|---|---|
申請できる人 | ・住宅ローン ・税金などを除く借入残高が5,000万円以内 ・安定した収入がある ・再生計画案に沿って返済できる | ・給与所得者である ・担保がない状態の借金が5,000万円以内 ・再生計画案に沿って返済できる |
債権者の同意 | 半数以上必要 | 不要 |
返済すべき金額 | ・民事再生法に定める最低弁済基準額 ・保有財産の金額いずれか多い方 | ・民事再生法に定める最低弁済基準額 ・保有財産の金額 ・可処分所得の2年分いずれか多い方 |
返済期間 | 原則3年。 特別の事情が認められれば5年まで延長可能 | 原則3年。 特別の事情が認められれば5年まで延長可能 |
返済すべき金額の根拠となる民事再生法に定める最低弁済基準額は、以下の通りです。
借入総額 | 最低弁済基準額 |
---|---|
100万円未満 | 借入総額 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円超1,500万円以下 | 借入総額の5分の1 |
1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円超 | 借入総額の10分の1 |
例えば、借入総額が300万円、住宅などの保有財産がない場合、個人再生により最低弁済基準額の100万円まで減額されます。
また、個人再生では申し立て後に、裁判所が選定した個人再生委員との面談などが行われるため、申し立てから完了まで半年~1年程度かかります。
自己破産では返済義務がなくなる|借金の理由によっては自己破産できないケースも
自己破産とは、裁判所に返済できる見込みがないことを認めてもらい、全ての借り入れの返済義務を免除してもらう債務整理方法です。
個人再生と違って、収入や借入総額に条件などはなく誰でも申請できますが、自己破産を行うと様々な制約を受けます。
自己破産を行うと官報に掲載され、個人信用情報機関にも登録されるため、情報が登録されている10年間、新たな借り入れはできません。
また、住宅や車などの高価な財産は処分され、債権者である貸金業者への支払いに充てられます。
しかし、全ての財産が没収されるわけではありません。
生活に最低限必要な家財道具や99万円以下の現金や20万円未満の預貯金などは、引き続き所有できます。
裁判所が返済できない状態であると認め、返済義務の免除を決定することを「免責許可の決定」といいます。
自己破産の申し立てから免責許可の決定までは数カ月かかることがありますが、この間は弁護士や税理士など、一定の職種には就けません。
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者 など
自己破産をする場合、財産を処分して貸金業者などの債権者への支払に充てる「破産手続き」と返済義務が免除される「免責手続き」を行います。
手続き後に、返済能力がないことを確認するため「破産審尋」と言われる裁判官からのヒアリングがあり、破産手続開始が決定されます。
破産審尋では、なぜ借金が膨らんだのかなど借金の経緯に関する質問もあります。
次に、処分する財産もなく、借金の理由もギャンブルや浪費など申告ではないと判断された場合は「同時廃止事件」として取り扱われます。
この場合は、返済義務を免除すべきかを決定するために「免責審尋」があり、問題なければ1週間後に免責許可が決定されます。
一方で、処分する財産がある場合や借金の理由が申告である場合は「管財事件」として取り扱われ、免責して良いかを判断する破産管財人が選任されます。
免責許可の決定から2週間後に官報に掲載され、その15日後に免責許可の決定が確定し、自己破産は完了です。
司法書士と弁護士では債務整理での権限は明確に違う|司法書士は書類作成代理業務と法的アドバイス
司法書士の業務は司法書士法で定められており、具体的な業務としては登記や供託に関する代理手続き、裁判所や法務局に提出する書類の作成、提出の代理業務です。
特に債務整理において司法書士は、主に裁判所などに提出する書類作成代理や法的なアドバイスを行います。
一方で司法書士と同様に、法律に関する専門知識を必要とする弁護士は、全ての債務整理において債務者の代理として活動できます。
つまり、書類作成はもちろんのこと、個人再生や自己破産の際の裁判所への出廷や債権者との交渉なども可能です。
司法書士 | 主に裁判所などへ提出する書類作成代理業務と法的なアドバイス |
---|---|
弁護士 | 全ての債務整理で債務者の代理業務 |
つまり、司法書士よりも弁護士のほうが、債務整理で広範囲の権限が認められていますが、債務整理は弁護士に依頼したほうが良いということではありません。
これから債務整理を司法書士と弁護士に依頼した場合の違いについて、詳しく解説していきます。
司法書士、弁護士どちらに依頼しても支払い督促はすぐに停止|書類も効力に差はない
明確に権限が違う司法書士と弁護士ですが、どちらに依頼しても、全ての債務整理で支払い督促はすぐに停止します。
貸金業者は、司法書士や弁護士から債務整理の依頼を受けたことが記載されている「受任通知」などが届いた時点で、債務者に連絡をしてはならない旨が貸金業法で定められているからです。
貸金業法
第21条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取り立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取り立てをするに当たって、人を伊白紙、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
第1項9号 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続きをとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があった場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
出典:貸金業法 | e-Gov法令検索
債務整理を考えている人の中には、既に毎月の返済が遅れていて、支払い督促の電話が毎日のようにかかっている人もいます。
そういった人にとっては、支払い督促の電話がかからなくなるだけでも大きなストレス軽減になります。
支払い督促がすぐに停止すること以外に債務整理で必要となる書類作成も、司法書士、弁護士どちらに依頼しても内容や効力に変わりありません。
平成14年司法書士法改正により一部訴訟代理業務や示談交渉業務が可能に|認定司法書士制度
司法書士は、債務整理では書類作成代理業務や法的アドバイスが主であり、基本的に裁判手続きや和解交渉で債務者の代理としての活動は、司法書士法でも認められていません。
つまり、債務整理を司法書士に依頼する場合、裁判所の手続きや債権者への書類作成やアドバイスはもらえるものの、裁判所への出頭や破産管財人、個人再生委員との面談や債権者との交渉は、債務者本人が対応しなければならないということです。
しかし、平成14年に司法書士法が改正され、一定の条件を満たした司法書士は認定司法書士として、以下の範囲内で弁護士同様代理業務ができるようになっています。
- 簡易裁判所の民事事件であること
- 上訴の提起、再審、強制執行に関する事項以外であること
- 金額が140万円以下であること
認定司法書士とは以下の要件を満たした司法書士です。
- 100時間の特別研修の修了
- 法務省の簡裁訴訟代理等能力認定考査で合格
この認定司法書士制度ができたことで、140万円以下の少額の任意整理に限り認定司法書士でも、弁護士同様債権者との和解交渉を代理で行えるようになりました。
認定司法書士が任意整理を代理で行える上限金額の140万円は、借入総額ではなく、1社当たりの借入金額を指します。
例えば、1社100万円の借り入れで合計3社300万円の場合は、認定司法書士が任意整理を代理で行えますが、2社が各75万円、1社が150万円の借り入れである場合は、同じ借入総額300万円であっても、150万円借り入れしている貸金業者との和解交渉は出来ません。
借入総額 | A社借入残高 | B社借入残高 | C社借入残高 | 認定司法書士が任意整理を代理で行うことができる範囲 |
---|---|---|---|---|
300万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | A社、B社、C社に対して可能 |
300万円 | 75万円 | 75万円 | 150万円 | A社、B社に対して可能 |
なお、弁護士と司法書士の債務整理ごとの業務の違いは以下の通りです。
弁護士と司法書士の債務整理ごとの業務の違い
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
140万円以下の任意整理 | 代理 | 代理 |
140万円を超える任意整理 | 代理 | 訴訟書類作成のみ代理 |
個人再生 | 代理 | 訴訟書類作成のみ代理 |
自己破産 | 代理 | 訴訟書類作成のみ代理 |
過払金請求も司法書士に依頼する場合は140万円以下|不明瞭な場合は引き受けてもらえないケースも
債務整理と併せて行われることが多い過払金請求も、過払金が140万円以下でなければ、司法書士への依頼はできません。
かつては、元本が140万円以下であれば、過払金の金額は問わずに対応してくれる司法書士もいました。
しかし、平成28年6月27日の最高裁の判決では、過払金請求に関しても140万円以下でなければ司法書士は対応してはならないとしています。
現在、司法書士に依頼できる債務整理、過払金請求を例を挙げて説明します。
司法書士に依頼できる過払金請求、債務整理の例
借入残高 | 過払金 | 司法書士に依頼 | |
---|---|---|---|
A社 | 50万円 | 25万円 | 〇 |
B社 | 180万円 | 150万円 | × 元本、過払金いずれも140万円を超えているため |
C社 | 150万円 | 30万円 | × 元本が140万円を超えているため債務整理はできない。 過払金請求のみは可能 |
D社 | 100万円 | 150万円 | × 過払金が140万円を超えているため。 なお、過払金のほうが多いため過払金請求のみで解決可能 |
E社 | 50万円 | 不明 (140万円を超えている可能性があると想定される) | × 不明の場合は140万円を超えるものとして扱わなければならないため |
D社の場合、過払金が借入残高より多いため、過払金請求すれば借入残高を差し引いた分が返金までされるため、債務整理のみをするメリットはありません。
従って、D社の場合は過払金請求を弁護士に依頼、もしくは自分で交渉することで解決できます。
また、E社のように過払金が不明であり、かつ140万円を超える可能性があると想定される場合は、140万円を超えるものとして扱わなければならない旨、民事訴訟法第8条2項に定められています。
訴訟の目的の価額の算定
第8条 裁判所法(昭和22年法律第59号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。
2 前項の価額を算定することができないときは、又は極めて困難であるときは、その価額は140万円を超えるものとみなす。
民事訴訟法 | e-Gov法令検索
例えば、E社の過払金が不明であっても、過払した期間が短いなどの理由で140万円を超えないことが明確な場合は、司法書士は対応できます。
司法書士が対応できる債務は元本、過払金いずれも140万円以下であるため、依頼する前に引き受けてもらえる債務であるか確認しておくようにしましょう。
そして、過払金が140万円を超えることが判明した場合には、弁護士を紹介することを明記している司法書士なのかについても、事前に確認しておきましょう。
代理人と140万円超の場合の法的な「使者」の違い|後々裁判やトラブルに巻き込まれることも
元本や過払金が140万円以下である場合、弁護士と同様に司法書士は代理人として債務者に相談することなく、貸金業者と交渉できます。
一方で元本や過払金が140万円超の場合、司法書士の立場は債務者の意見や主張を伝える法的には「使者」となります。
従って140万円超の債務整理や過払金請求では、あくまでも債務者自身が交渉しなければならず、司法書士は判断のための法的なアドバイスにとどまります。
しかし、140万円を超える債務整理や過払金請求では「代理人」と「使者」の境界線が曖昧となることから、後々裁判やトラブルになることもあります。
140万円を超える過払金請求に関する裁判では、平成28年6月27日の最高裁判決で本人名義での交渉、訴訟、和解あったものの、代理できない業務の範囲であったとして、司法書士の行為を違法としています。
判例では、代理人と使者の境界線は明確にされていませんが、貸金業者からの送達場所や交渉窓口を司法書士にした場合は、本人名義での交渉、訴訟、和解であっても、実質的には司法書士が代理人と解釈されています。
また別の140万円を超える過払金請求に関する裁判では、平成29年7月24日の最高裁判決で司法書士の行為が違法であっても、和解は有効であるとしています。
債務整理や過払金請求をする際に、余計なトラブルに巻き込まれることがないように、140万円を超える場合は、弁護士に依頼するようにしましょう。
任意整理に関する費用の違い|ガイドラインで定められている
債務整理を司法書士や弁護士に依頼する場合、様々な名目の費用が発生しますが、具体的な基準がないため、度々不適切な処理や高額の報酬を請求するなどのトラブルが発生していました。
そこで、平成23年に日本司法書士会連合会、日本弁護士連合会は任意整理に関する報酬の規程や指針をそれぞれ定めています。
規程や指針に違反しても罰則はないため、中には高額な報酬を請求する事務所もありますが、事務所選びの判断基準として活用できます。
それぞれの規程、指針が定める任意整理に係る費用は以下の通りです。
費用の内容 | 司法書士 | 弁護士 | ||
---|---|---|---|---|
呼称 | 金額 | 呼称 | 金額 | |
結果いかんに関わらず発生する事務の対価 | 定額報酬 | 債権者1人当たり5万円限度 | 着手金 | 上限金額設定はないものの、事務の対価であると規定 |
債務が減額となった場合、その金額に応じて発生する報酬 | 減額報酬 | 減額となった金額の10%限度 | 解決報酬金 | 債権者1人当たり2万円限度 |
減額保証金 | 減額となった金額の10%限度 | |||
過払金を回収した場合に発生する報酬 | 過払金返還報酬 | ・訴訟によらず回収した場合20% ・訴訟により回収した場合25% | 過払金報酬金 | ・訴訟によらず回収した場合20% ・訴訟により回収した場合25% |
(債務整理事件処理の規律を定める規程 (nichibenren.or.jp)、債務整理事件における報酬に関する規則基準の考え方 (shiho-shoshi.or.jp)より作成)
任意整理での費用では、事務の対価が司法書士は定められているのに対し、弁護士は具体的な定めがない点や減額となった場合、弁護士は解決報酬金が別途かかるなど違いがあります。
個人再生で発生する費用はどちらに依頼しても大差ない傾向|報酬は司法書士が安い
個人再生の費用に関して、任意整理と違い日本司法書士会連合会や日本弁護士連合会は規程や指針を定めていないため、事務所によって違います。
個人再生の場合の弁護士、司法書士費用
金額 | |
---|---|
司法書士 | 20~40万円 |
弁護士 | 30~50万円 |
債務者の代理人として手続きできる弁護士費用のほうが、10万円前後高い傾向にあります。
また、どの弁護士、司法書士に依頼する場合でも共通して発生する裁判所費用は以下の通りです。
金額 | 納付方法 | |
---|---|---|
申し立て費用 | 10,000円 | 収入印紙で納付 |
予納郵券 | 2,000円程度 (弁護士に依頼する場合は1,000円程度) | 切手で納付 |
官報掲載費用 | 約13,000円 | 現金で納付 |
個人再生委員の報酬 | 15~25万円 (地方裁判所によって異なる。 また、弁護士に依頼する場合は15万円程度になる) | 現金で納付 |
個人再生委員への報酬は、弁護士に依頼することで10万円程度カットできます。
従って、弁護士、司法書士費用と裁判所費用を合計すると以下の通りであり、どちらに依頼しても費用面で大差はない傾向にあります。
個人再生の際の費用総額
金額 | |
---|---|
司法書士 | 475,000~675,000円 |
弁護士 | 475,000~675,000円 |
費用総額で大きな違いがないのであれば、代理人として手続きしてもらえる弁護士に依頼したほうが安心できると言えます。
自己破産は弁護士に依頼した方が費用が安くなることも|少額管財事件
自己破産の場合も、個人再生と同じく規程や指針が定められていないため、依頼する事務所によって費用が異なります。
また自己破産では、債務者の財産の有無や借金の理由で同時廃止事件、管財事件のどちらに振り分けられたかによって裁判所に納める予納金の金額が変わります。
そして、弁護士に依頼した自己破産で管財事件となった場合は、少額管財事件として取り扱うことができるため、予納金が大幅に減額できます。
自己破産の際の費用
依頼先 | 事務所に支払う費用 | 自己破産の内容 | 裁判所費用(手数料) | 裁判所費用(予納郵券) | 裁判所費用(予納金他) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
司法書士 | 15~30万円 | 同時廃止事件 | 1,500円 | 4,000円 | 1~3万円 | 165,500~335,500円 |
管財事件 | 50万円~ | 655,500~805,500円 | ||||
弁護士 | 20~50万円 | 同時廃止事件 | 1~3万円 | 215,500~535,500円 | ||
管財事件 (少額管財事件) | 20万円+官報掲載費用15,000円程度 | 420,500~720,500円 |
事務所に支払う費用に大きな差があるものの、同時廃止事件であれば司法書士、管財事件であれば弁護士に依頼したほうが、費用は低額で済む傾向にあります。
どの債務整理を司法書士に依頼したほうが良いということはない|費用対効果の検討が必要
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があり、それぞれ特徴があります。
そして、どの債務整理であっても司法書士に依頼できます。
しかし、140万円以下の任意整理、過払金請求以外は債務者の代理とはなれず、書類作成代理業務と法的アドバイスにとどまります。
効果だけを考えるのであれば、全ての債務整理において代理人となれる弁護士に依頼するほうが任せっきりに出来る分だけ安心できる点は魅力ですが、費用が高くなる傾向にあります。
また司法書士や弁護士に支払う費用も事務所ごとに違っており、どの債務整理を司法書士に依頼した方が良いと定義できるものではありません。
従って、依頼する司法書士が費用に見合った分の働きをしてくれるかどうか、事前に見極める必要があります。
そのためにも、先ずは司法書士の無料相談などを活用することから始めましょう。