個人再生手続とは、借金などが返済できなくなった人のための手続きのことです。
手続きは自分で行う方法もありますが、書類を揃えるのが難しく申立が不利になる場合も考えられます。
個人再生を考えた場合に、専門家へ依頼すると不利のないよう手続きを進められるため、お勧めです。
この記事では、個人再生費用が払えない場合の解決法と必要な費用について紹介していきます。
- 個人再生費用が払えない時は分割払いを選択する
- 個人再生にかかる費用は
- 費用を安くするためには法テラスを利用する
- 個人再生手続きの際に虚偽の発言をすると手続を取り消される
個人再生費用の負担を抑える方法や手続きの際に気をつけたい事項についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
個人再生費用が払えない場合の3つの対処法
個人再生費用が払えない場合の対処法は、下記の通りです。
- 分割払いや後払いを選択する
- 法テラスを利用する
- 専門家に相談する
個人再生にかかる費用は高額となるため、すぐに準備できない場合があります。
しかし個人再生費用を払わないと申し立てもできず、借金の滞納が続くばかりです。
借金の返済を怠っていると裁判所から督促状が届き、それも無視し続けると財産の差し押さえなど追い込まれていきます。
裁判所から通知が届いた場合、異議申し立てや答弁書の提出で猶予ができるため、なるべく早く個人再生の準備をする方が望ましいです。
個人再生費用が用意できずに困っている人は、次の方法から自分に合った解決法を見つけてください。
分割払いや後払いを選択する
分割払いや後払いが可能な専門家に依頼し、手続きをしてもらう方法です。
借金を多く取り扱っている事務所であれば、困窮している状況もよく理解してくれます。
そのため、分割払いや後払いに応じてくれる事務所も少なくないです。
一括払いのみ対応の事務所を避け、分割払いや後払いができる所を探して依頼します。
分割払いの回数や期間などは事務所によって異なるため、借金の問題を相談した事務所で確認しましょう。
法テラスを利用する
法テラスを利用すると、一般の弁護士に依頼する場合と比較して低額で手続きができる可能性があります。
誰でも利用できるわけではなく、利用するために条件を満たす必要があります。
公式サイトで提示している条件は、下記の通りです。
- 収入や資産が一定の基準以下であること
- 日本に住所を持ち、適法に在留していること
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
この条件を満たす限り、法テラスでの依頼が可能となり費用を抑えられるため、費用が用意できないと考えていた人も支払える可能性があります。
手取り月収額や所有している現金についての基準は、下記の通りです。
手取り月収額の基準(収入要件)
手取り月収額(賞与込み) | 住宅ローンがある場合に加算できる限度額 | |
---|---|---|
1人 | 18万2,000円以下 (20万200円以下) | 4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 25万1,000円以下 (27万6,100円以下) | 5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 27万2,000円以下 (29万9,200円以下) | 6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 | 29万9,000円以下 (32万8,900円以下) | 7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
所有している財産の基準(資産要件)
1人 | 180万円以下 |
---|---|
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人 | 300万円以下 |
要件確認は、原則本人に直接電話して、口頭での確認がおこなわれます。
具体的な要件の内容や説明を受けたい人は、住んでいる地域の近くにある法テラス事務所に問い合わせると良いでしょう。
法テラスの利用には時間がかかる
法テラスでは審査に時間がかかったり、担当の専門家を選べなかったりする点が不利です。
債権者から督促が来ている場合はすぐにでも手続きをしたいところですが、法テラスは相談から手続きまで通常より時間がかかります。
直接専門家に依頼した場合はすぐに対応してもらえるため、督促状が届いている場合は直接依頼する方法をお勧めします。
さらに法テラスでは、紹介された専門家が必ずしも債務整理の経験豊富というわけではありません。
相性が合わない場合があるという欠点も知っておくと、実際に利用してから戸惑わずに済むでしょう。
専門家に相談する
専門家に相談すると、自分にあった解決策を提案してもらえます。
事務所によっては、無料で相談を受けられるところもあるため、一度相談してみる方が望ましいです。
法律面での知識がなければ、1人で考えていても解決策が浮かびません。
専門家に相談してどの方法が自分に適しているのかじっくりと検討し、個人再生の手続きを進めましょう。
個人再生にかかる費用の相場は20万円~40万円
個人再生費用は、弁護士費用と裁判所費用の2種類あり、合わせて20万円~40万円が目安です。
裁判所費用が3万円程度であるため、個人再生費用の多くは弁護士費用となります。
弁護士は自由に金額を設定できるため、事務所によって変動があります。
必ずしも金額の目安になる訳ではないため、事前に確認したり、事情をよく説明し相談する方が望ましいです。
弁護士に依頼した場合の費用
弁護士に支払う費用の内訳と目安は、下記の通りです。
相談料 | 弁護士に個人再生について相談したときに支払う費用 | |
---|---|---|
着手金 | 個人再生の手続きを始めた時に支払う費用 | 20万円~30万円 |
報酬金 | 個人再生の手続きが完了した場合に支払う費用 | 0円~10万円 |
相談料が無料の事務所であったり、着手金が相場より低額だったりするなど、事務所によって料金設定は様々です。
しかし着手金が相場より少ない場合、報酬金が高額である場合もあるため、総額で考える必要があるでしょう。
個人再生費用のうち、報酬金については住宅ローンの有無により変わってきます。
個人再生では特定の負債のみの減額はおこなえませんが、例外として住宅ローン特則を利用すると住宅ローンのみ除外できます。
返済額は増えますが、住宅を残したまま個人再生を行いたい場合は有効です。
裁判所に支払う費用
裁判所に支払う費用の内訳と目安は、下記の通りです。
予納金 | 個人再生の手続きの際裁判所に納める費用 |
---|---|
収入印紙代 | 手数料などの収納金徴収のために政府が発行する印紙の費用 |
切手代 | 手続きに必要な書類を郵送するための切手費用 |
裁判所には、収入印紙代や切手代の他、予納金を支払う必要があります。
予納金は、裁判所によって金額が変動します。
所有財産によっても予納金は変動し、財産が多いほど高くなる傾向です。
予納金は、同時廃止をすると費用を抑えられます。
同時廃止とは、個人再生の申し立てをしたときに同時に手続きを完了する方法です。
保有している財産が20万円以下の場合に同時廃止が可能で、財産が高額であると財産調査が必要となるため、管財事件として扱われます。
同時廃止は、費用が抑えられるだけでなく期間も短くて済むため、有効な選択肢です。
個人再生費用を分割する方法
個人再生費用の分割払いに応じてくれる事務所で依頼すると、初期費用がなくても手続きができます。
分割払いに対応してくれる事務所へ依頼した後、債権者への返済を止めます。
半年~1年ほどかけて事務所へ費用を振り込み、費用が貯まったら裁判所へ個人再生の手続きが可能です。
借金の返済と個人再生費用の積み立てを同時に行うわけではないため、ここで生計を立て直せます。
仮に費用の振込が難しい場合には、個人再生の申し立ても困難です。
困った場合は放置せず、専門家に相談して解決するようにしましょう。
専門家の依頼費用はなるべく早く返済する
一般的には、専門家への依頼費用を支払い終わってから個人再生の申し立てを行います。
依頼費用が未払いのままでは手続きが進められず、借金を滞納している状態が続くため、なるべく早く支払う方が望ましいです。
借金の滞納が続くと、給与や財産の差し押さえなどの恐れがあります。
初期費用が用意できない場合には分割払いが有効となるため、専門家に相談して自分に合った方法で支払いましょう。
個人再生が難しい場合は自己破産も視野にいれる
個人再生費用は、数年間決められた金額を支払っていくのを前提とした手続きです。
そのため、毎月一定の金額を払うのが難しい場合、個人再生の手続き自体ができない可能性があります。
専門家への分割での支払いが難しい場合は、その後の個人再生費用の支払いもできないとみなされるため、個人再生の手続きをするのは非常に厳しいです。
そういった場合は、自己破産も視野に入れて検討する方が望ましいでしょう。
個人再生と自己破産の違いは、下記の通りです。
個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|
借金 | 減額 | 免除 |
財産 | 財産の価値と同等額の返済で手元に残る | 20万円以上のものは処分 |
資格制限 | なし | あり |
自己破産をした場合、借金が免除になる代わりに財産を処分されたり、資格制限といって特定の仕事に就けなかったりするなどの不利な状況に陥ります。
毎月の返済の計画を立てられるのであれば、個人再生に留め、返済を行っていく方が望ましいです。
個人再生費用を安くするための3つの方法
個人再生費用をできるだけ低額で済ませるためには、司法書士や法テラスなどへの依頼が有効です。
弁護士は経験が豊富であったり、専門の取り扱い事案であったりするなど知識も豊富で、様々な面からの支援が期待できます。
弁護士への直接依頼は安心感があるだけでなく、期間を短く済ませられる利点もあります。
しかしその反面、費用が高額となる場合が多いです。
費用が用意できない場合や低額で済ませたい場合は、色々な方法を視野に入れて検討してみましょう。
司法書士に依頼する
司法書士に依頼する方が、弁護士に依頼するより費用が低額です。
しかし司法書士では、弁護士と対応できる範囲が異なります。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
相談 | ◯ | ◯ |
書類の作成 | ◯ | ◯ |
裁判所への同伴 | ◯ | 原則できない |
再生計画案の作成 | ◯ | ◯ |
司法書士は書類の作成が主な業務となり、手続きを終えるまで支援はしてもらえますが、裁判所へ出向く際は自身で行う必要があります。
とはいえ、個人再生の手続きは多くが書類で成立するため、弁護士と司法書士で大差なく依頼が可能です。
法テラスであれば弁護士費用が払えない場合も専門家に依頼できる
法テラスには民事法律扶助という制度があるため、費用が払えない場合も専門家へ依頼できます。
民事法律扶助とは、経済的に困難な人でも弁護士に無料相談できたり、費用を立て替えたりしてくれる制度です。
法テラスの民事法律扶助を利用すると、最初に費用を用意できない場合でも弁護士に依頼できます。
自分で手続きを済ませても費用が変わらない場合が多い
個人再生費用の手続きを専門家に依頼せず自分で済ませる場合は、裁判所で個人再生委員を選任して進めていきます。
裁判所での費用について下記の表にまとめました。
費用 | |
---|---|
代理人弁護士がいる場合 | 30,000円程度 |
代理人弁護士がいない場合 | 215,000円程度 |
引用:裁判所
代理人の有無によって裁判所での費用が変わるため、自分で進めた場合でも依頼した場合と変わらない金額になる可能性があります。
日常の業務をこなしながら書類の用意や再生計画案の作成など、個人再生の手続きを行うのは相当難しいです。
さらに、個人再生委員は裁判所と申立人の中立の立場であるため、申立人にとって不利な条件が見つかった場合も裁判所へ報告されます。
自身で書類を作成し個人再生委員を選任して進めていくと、希望した結果に至らない可能性があるため、専門家に依頼する方が望ましいです。
個人再生手続の際やってはいけない内容
個人再生手続きの際、やってはいけない内容として下記の7つが挙げられます。
- 滞納したまま放置する
- 説明した内容が虚偽である
- 必要な書類を提出しない
- 履行テストを受けない
- 手続き費用を支払わない
- 新たな借入をする
- 特定の借入先のみ返済を優先する
もしこれらをしてしまった場合、借金が減額されなかったり、事故情報が削除されなかったりするなど自身に不利な状況となります。
手続きのために支払った費用も戻らなくなってしまうため、無駄にならないようにしましょう。
個人再生の事案は、決して簡単なものではありません。
法律上のルールを知らなかった、無理に申し立てを進めてしまったなどが原因となって失敗してしまう可能性があります。
失敗を回避するためにも、専門家に依頼して手続きを進めていく方が安心です。
滞納したまま放置する
個人再生費用の手続きをする際にやってはいけない内容の1つとして、公租公課の滞納があります。
公租公課の滞納をし続けると、個人再生計画が認められなかったり、個人再生の申請手続きの開始決定が裁判所から認可されなかったりする場合もある点は留意しましょう。
支払うべき税金を滞納したまま放置してしまうと個人再生できない場合もありますが、将来的に完済できる見込みがあると認められた場合、裁判所で手続きができます。
説明した内容が虚偽である
個人再生費用の手続きでは、虚偽の内容で申請してはいけません。
虚偽の申告をした場合は、民事再生法第237条2項や第244条にあるように手続きが途中で廃止されたり、同法第25条4号により申し立てを棄却されたりする場合があります。
個人再生の申立手続きをする際には、借金額や借入先、家計収支や財産状況などについて正しい申告が大切です。
虚偽の申告の内容は、財産の評価額を実際よりも低く申告する、財産を隠したり知人や身内の人からの借金を除外して申し立てをしたりするなどが挙げられます。
悪質な場合、同法第255条1項による詐欺再生罪という罪に問われる場合があるため、申告は正確に行う必要があります。
必要な書類を提出しない
個人再生手続を認可してもらうには、必要な書類を期限内に提出する必要があります。
個人再生では、裁判所で指定した書類を期限内に揃えられるかという点が手続き上重要です。
民事再生第191条2項により期限内に提出が見込めない場合、裁判所は再生手続の廃止を決定すると定められているため、期限内に指定の書類を揃える必要があります。
さらに裁判所に提出した書類に不備があると、場合によっては再生手続きが途中で打ち切られてしまうため、確認は必須です。
仕事等で忙しかったり書き方がわからなかったりする場合は、専門家に依頼すると書類作成を代行してもらえます。
決められた書類を不備なく、期限内の提出が最重要となるため、専門家に依頼して作成してもらう方が望ましいでしょう。
履行テストを受けない
個人再生費用の手続きを進める際に、履行テストの積み立てを滞納してはいけません。
申立を行った後、再生計画案が承認される前に履行テストを行います。
履行テストは、今後再生計画に沿って返済していく見込みがあるか判断する基準で、申立人が4ヶ月~6ヶ月の期間積み立てを行う制度です。
履行テストを受けない、支払いが滞っているという状況になると再生計画に従っての支払いが難しいと判断され、認可されない場合があります。
個人再生の不認可を回避するためにも、決められた通り支払いを行いましょう。
手続き費用を支払わない
手続き費用を納付期限までに支払わないと、個人再生手続が不認可とされてしまいます。
裁判所に支払う予納金などの手続き費用について、期限内に支払う必要があります。
納付期限に間に合わない場合、手続きができなくなってしまうため、指示通り支払うようにしましょう。
新たな借入をする
弁護士に個人再生手続きを依頼した後は、新たな借入をしてはいけません。
債権者への支払いを止めている状態で新たに借入を行うと、民事再生法第237条2項によって個人申立手続きが誠実になされていないとされ、申し立てが棄却される恐れがあります。
手続きを依頼した後は、金融機関のみならず、知人や友人からの借入など個人間のやり取りも同様です。
さらに返済ができない状況を承知の上で借入をした場合、刑法第246条1項の詐欺罪に該当するため、手続きを開始した段階で借入をしてはいけません。
特定の借入先のみ返済を優先する
個人再生の手続きをする際に、一部の債権者への返済を優先させてはいけません。
例えば手続きから除外しようと、保証人がついている借金や親族や知人からの借金、担保権がついている借金を優先的に返済するなどの行為です。
この場合、偏頗弁済の問題にあたるため避けましょう。
偏頗弁済とは、個人再生の申し立て前に特定の債権者への返済を優先させるという内容です。
他の債権者との平等を図るために作られ、個人再生で偏頗弁済に当たる行為をすると、返済した金額が所有財産の総額に加算されます。
結果的に、返済額が本来返済するはずだった額よりも大きくなってしまう可能性があるため、特定の債権者に優先して返済をしない方が望ましいでしょう。
個人再生では財産状況を調べられる
財産状況の調査は、個人再生の手続きが必要であるかを判断するために行われます。
個人再生手続の1つに財産目録を提出する必要があり、内容は下記の通りです。
- 現金
- 預貯金
- 退職金の有無や見込額
- 加入している保険や解約返戻金の有無
- 所有している不動産
裁判所か裁判所が選任した再生委員が調査を行い、財産目録と合っているか、財産隠し等の不正がないか確認していきます。
財産が高額であると、その分個人再生で支払う金額が上がるため、財産を隠しておこうと考えられる場合があります。
しかし、財産隠しをする方が、個人再生の手続きが通らない可能性が高いです。
個人再生の財産調査で不正が見つかると、個人再生手続の廃止や再生計画の不認可、再生計画の取り消しといった事態になる可能性があります。
財産状況の調査では、再生計画の支払う金額を決めていく大切な事項となるため、正しい申告が大切です。
個人再生費用が払えない場合は専門家に相談
個人再生費用が払えない場合でも、専門家に相談すると解決できる場合があります。
費用が払えない場合の有効な対処法は申告人によって状況が異なるため、専門家に相談し自身に合った解決策を提示してもらう方が望ましいでしょう。
個人再生の手続きは専門的なやり取りも多く、自身で進めて不利な状況になってしまったり、専門家に依頼した方が低額で済んだりする場合があります。
専門家に依頼したほうが、不安なく有利に個人再生の手続きを進められるでしょう。
最後に、この記事で紹介した内容をまとめました。
- 個人再生費用が払えない場合の対処法
- 個人再生費用の相場
- 手続きでやってはいけない内容
- 費用を安くする方法
ぜひ参考にして、個人再生の手続きを有利に実行してください。