仮想通貨は投資や資産形成に利用できるものとして注目されており、普段の生活でも耳にする機会が多くなってきています。
そんな中で仮想通貨の基本を知ることによって、自分が投資を始める時の候補や将来的に利用する時にもすぐに理解できるようになります。
この記事では仮想通貨の基本的な部分について、色々な項目から紹介していきます。
仮想通貨とはどんなものか?
仮想通貨は日常的に聞く言葉になってきていますが、単語で聞いているだけだと少し勘違いしてしまう部分もあります。
最初に仮想通貨がどんなものであるかを見ていきましょう。
仮想通貨の定義
仮想通貨(暗号資産)はその名の通り仮想、つまりは紙幣や硬貨といった実物の通貨ではなく、インターネット上の電子データとしてある通貨のことです。
ただし、実物の通貨でなければ全て仮想通貨になるわけではありません。
「資金決済に関する法律」の第二の5において、仮想通貨は以下のように定義づけられています。
- 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
- 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
もう少し噛み砕いて書くと、不特定の者に対する支払い及び交換に使用可能、また日本円や米ドルといった法定通貨や他の仮想通貨との交換が可能で、電子データ間で取引できるものということです。
電子データの取引で言えば電子マネーやクレジットカードを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、電子マネーは一定の範囲内での利用、かつ基本は法定通貨との交換ができず、クレジットカードは法定通貨を建て替えることによる支払いなので、仮想通貨とは異なります。
仮想通貨と法定通貨の違いと特徴
先の定義を踏まえて仮想通貨を見ると、法定通貨との様々な違いがあり、それが仮想通貨の特徴と言える部分にもなっています。
中心となる管理者が存在しない
法定通貨は政府や銀行によって公的に管理されるものですが、仮想通貨の多くは中心を置いて監視するような管理体制ではありません(例外はあります)。
仮想通貨の管理は仮想通貨のネットワークに参加する者(仮想通貨の利用者)全員が監視するようなシステムが組まれています。
法定通貨の価値が安定しているのは、政府や銀行による管理があることが要因です。
反対に仮想通貨は利用者の数や流通量などの需要と供給によって価値が変化するものです。
発行上限がある
法定通貨は経済状況によっては紙幣を増刷して、法定通貨の流通数を増やせます。
一方、仮想通貨は発行上限が決められているものが多く、基本的にはその上限が増えることはありません。
これは無数に増えてしまうと仮想通貨の紙幣としての価値が下がってしまう可能性があるため、価仮想通貨としての価値を保障する意味で上限を設けているのです。
仮想通貨の種類
仮想通貨と言えばビットコインを耳にすることが多いかもしれませんが、ビットコインは仮想通貨の一種類です。
しかし、代表的な仮想通貨というのは事実であり、ビットコインを基盤に作られたものが多いことから、ビットコイン以外の仮想通貨をまとめてアルトコインと呼びます。
そして、ビットコイン・アルトコインといった仮想通貨の総数は現在1,000種類以上あると言われており、仮想通貨ごとに開発された目的やルールが異なります。
仮想通貨の種類は現在も増えて続けていますが、多くの人が使うものは限られてきます。
それでは代表的な仮想通貨2つを見ていきましょう。
ビットコイン(BTC)
ビットコインは2008年にインターネット上に登録され、2009年から運用開始された仮想通貨です。
2021年現在でも時価総額と取引量が最も多く、初心者で仮想通貨による取引を行う場合はビットコインを使うことになると思います。
ビットコインではネットワーク上の価値の保存や移転を行うためにブロックチェーンという技術を利用しており、これが他のアルトコインの基盤として採用されています。
運営者はBitcoin Foundation、通貨単位はBTC、発行上限は2100万BTCです。
イーサリアム(ETH)
イーサリアムは2015年に運用開始された仮想通貨で、2021年現在ではビットコインに次いで時価総額が大きい仮想通貨として知られています。
ビットコインとの違いは第三者の介入なしに取引で行われた契約を自動執行できる「スマートコントラクト」を採用していることや発行上限が設けられていないことです。
先の項目で仮想通貨は価値を保障するために発行上限を設けると書きましたが、イーサリアムは敢えてそれを採用していません。
しかし、それによってイーサリアムは安定した供給ができるメリットが生まれており、ビットコインとは異なる発展をしています。
運営者はイーサリアム財団、通貨単位はETHです。
仮想通貨の活用法
仮想通貨がどんなものかわかったところで、次はその仮想通貨がどのような形で活用されているかを見ていきます。
他の通貨との交換
定義にあったように仮想通貨は円や米ドルなどの法定通貨や異なる仮想通貨との交換が可能になっています。
これは以降で紹介する3つにも関わることで、仮想通貨を一定期間早く保有しておくことで価値を上げたり、支払いに使えたりと様々な活用ができます。
第三者を介さない送金
仮想通貨はインターネット上で取引できることから世界中のどこにいてもすぐに送金が可能です。
しかもこの送金は仮想通貨のネットワーク上で送ることから、非常にスピーディーかつ銀行などの第三者を介さないのが特徴です。
通常の送金では手数料や仲介料が発生する可能性もあるため、仮想通貨は安価に早く送金できるメリットがあります。
買い物の決済
近年、店舗やネットショッピングで仮想通貨による決済を採用するところが徐々に出てきており、電子マネーやクレジットカードのように、決済で活用できるようになってきています。
こちらも送金と同じく銀行などを介さないことで、決済コストを安くしたり、手続きを簡略化したりなど、様々なメリットがあります。
ただし、日本における仮想通貨による決済はまだ普及に時間がかかっており、一部の家電量販店やネットショッピングに限られるものです。
投資・取引
仮想通貨は種類によっては価格変動の幅が大きく、安い時に買っておいて、高い時に売れば大きな利益を得られる可能性があります。
このことから仮想通貨は投資のために使われることが多く、上記のような売買取引の他にも仮想通貨の証拠金取引など、多種多様な取引方法があります。
日本で仮想通貨の投資・取引をしていく場合は仮想通貨交換業者や証券会社が展開する仮想通貨取引所で口座開設することで始められるものです。
仮想通貨のメリットとデメリット
ここでは仮想通貨を運用していく上でのメリットとデメリットを見ていきます。
仮想通貨を運用するメリット
支払いや取引で言うと、他の決済方法や株式・FXといった別の取引方法があるものです。
その中で仮想通貨は主に取引の面でメリットがあります。
大きな利益を得られる可能性がある
投資・取引において価格変動の幅が大きいことを挙げましたが、これは株式やFXなどの他の商品よりも大きいという意味です。
それに伴って少額の投資からでも大きな利益を得られる可能性があり、他の取引にはないメリットになります。
24時間の取引が可能である
株式やFXは通常の場合、取引できる時間が限られており、世界でその商品の価値に関わる変動が起きても、開始時間を待たなければならない時があるものです(株式等が夜間取引に対応する場合はこの限りではありません)。
時間が経つほど保有している商品の価値が下がって損してしまうのは、利用者にとっても望むところではないと思います。
それに対して仮想通貨は、ネットワーク上の取引であることから24時間対応可能で、上記のような急な変動にも即座に対応できるというメリットがあります。
また、日中は仕事で忙しい人にとっては夜間でも取引に参加できることは大きなメリットです。
仮想通貨で注意すべきデメリット
仮想通貨は様々な運用ができる一方で、リスクとして注意しておくべきデメリットもあります。
下落の幅も大きい
投資や取引では商品の価値が上昇することもあれば下落することもあり、それを見極めて売買していくものです。
しかし、仮想通貨の場合は価格変動の幅が大きいことで、下落した場合の損益は他の商品よりも大きくなってしまう可能性があります。
大きな利益を得られる可能性があるのは確かですが、もしも予想に反してしまったり、取引するタイミングを逃すと損することになるので、それを念頭に置いて投資・取引する必要があります。
ネットワーク上のトラブル
仮想通貨はネットワーク上の取引であることやブロックチェーンなどのシステムを採用することでセキュリティを万全にして価値を守っています。
しかし、近年はそのようなセキュリティをかいくぐってサイバー攻撃をしかけたり、パソコンやスマホ等から利用者が意図しないところパスワード等が流出したりすることで、保有する仮想通貨が不正利用される可能性もゼロではありません。
この点は法定通貨が紙幣や硬貨としてある方が安心できるものですが、サイバー攻撃については仮想通貨側も滅多に起こる事例ではなく、仮想通貨側でも日々アップデートや対策が考えられているので、それほど気にしなくても良いでしょう。
一方、パスワードの紛失や電子機器からの流出については利用者が注意すべき点であり、仮想通貨を運用する場合はそれらの保存方法やセキュリティはしっかり考えておきましょう。
仮想通貨の税金と確定申告
仮想通貨は投資や取引において利益を得られる可能性がありますが、利益が発生すると課税の対象になり、確定申告をする必要が出てきます。
それでは仮想通貨にかかる税金と確定申告の要項について見ていきましょう。
仮想通貨における課税対象
仮想通貨の売却や使用等で利益を得た場合、その利益に対して所得税がかかります。
具体的に見ると、仮想通貨は所得税の中の雑所得に分類され、通常の場合で20万円以上の利益、扶養されている場合は33万円以上の利益が発生した時に報告する必要があり、それら以下の利益であれば申告義務は生じません(自主的に申告することは可能です)。
以下は仮想通貨の仕様内容による所得金額の判定です。
使用内容 | 所得金額の判定 |
---|---|
仮想通貨の売却 | 売却価格と取得価格との差額 |
仮想通貨での商品の購入 | 使用時点での商品価格と仮想通貨の取得価格との差額 |
仮想通貨と仮想通貨の交換 | 使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価格)と保有する仮想通貨の取得価格との差額 |
仮想通貨の取得価額 | 同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合、当該仮想通貨は移動平均法により算出 |
仮想通貨の分裂・分岐(何らかの事情で保有していた仮想通貨が分裂・分岐し、新たな仮想通貨が誕生し取得した場合) | 所得時点の時価を基に計算する ただし、分裂・分岐した時点では取引相場が存在しないことから取得時点では価値を有しておらず、所得が生じるのは新たな仮想通貨を売却・使用した時になる その場合、所得価格は0円で計算する |
仮想通貨の証拠金取引 | 申告分離課税は適用されず、総合課税に申告する |
暗号資産(仮想通貨)のマイニング等 | 事業所得または雑所得の対象となる |
損失の取扱い | 仮想通貨を含む雑所得の計算上の損失は他の所得と通算できない |
この中で特に重要なのは「損失の取扱い」で、不動産所得や譲渡所得においては損失が生じた場合に他の利益が出た所得から差し引いて、課税される額を減らせる損益通算が使えますが、仮想通貨を含む雑所得は対象外になります。
また、その年の損失を控除し切れない場合に翌年以降の利益によって控除できるようになる繰越控除についても対象外になります。
所得税の税率
仮想通貨が課税対象になって所得税が発生すると、金額によって以下の税率が適用されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
仮想通貨と確定申告
仮想通貨の利益で発生した税金は確定申告によって申告し、納税する必要があります。
確定申告の対象となるのは毎年1月1日~12月31日までの所得で、申告は原則毎年2月16日から3月15日までの期間です。
期間内に確定申告書やその他資料を制作して、インターネット上や税務署に提出すると、後日納付する金額が知らされます。
仮想通貨においてはあくまで利益は発生した時に必要なものですが、申告を怠ってしまうと、本来納付すべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税が発生します。
仮想通貨取引所での取引方法と手数料
仮想通貨の投資・取引は仮想通貨取引所を利用して行いますが、そこでの取引には種類があったり、手数料がかかったりします。
ここでは仮想通貨取引所の取引に関わる部分について見ていきます。
仮想通貨取引所の取引の種類
仮想通貨取引所で口座開設を行うと、「販売所」か「取引所」のどちらかで仮想通貨を購入できます。
この二つは主に以下のような違いとメリット・デメリットがあります。
販売所 | 取引所 | |
---|---|---|
取引の やり方 | 利用者と仮想通貨取引所との間で取引を行う | 仮想通貨取引所に登録している利用者同士で取引を行う (仮想通貨取引所は仲介) |
メリット | 仮想通貨交換業者が値段設定しているため、すぐに取引できる | スプレッドによる手数料が安く済む |
デメリット | スプレッドによる手数料が高くなることがある | 販売所よりも取扱銘柄の数が限られてくる場合がある また、利用者同士の取引になるため、やや複雑になる |
二つの取引では売買の手数料とは別にスプレッド(購入価格と売却価格の差)が発生し、実質的な手数料になってきます。
その中で利用者同士の取引となる取引所の方がスプレッドによる手数料が安くなる(スプレッドが狭い)ため、手数料だけでみると、取引所の方を利用する方が望ましいです。
しかし、取引所の取引は初心者からすると複雑な部分があり、簡単に取引していきたい場合は販売所の方が利用しやすいと言えます。
仮想通貨取引所の取扱通貨と手数料
仮想通貨取引所は、会社ごとに取り扱っている仮想通貨の数や各種手数料の価格が異なります。
それでは仮想通貨取引所8社について、4つの項目を見ていきましょう。
コイン チェック | DMM Bitcoin | bit Flyer | GMO コイン | ビット バンク | Liquid by Quoine | LINE BITMAX | SBI VC トレード | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
取扱通貨数 | 15通貨 | 12通貨 | 12通貨 | 14通貨 | 9通貨 | 5通貨 | 6通貨 | 3通貨 |
販売所 手数料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
取引所 手数料 | 無料 | 現物取引:無料 レバレッジ取引:無料 | 0.01 ~ 0.15% | メイカー: -0.01% テイカー:0.05% | メイカー: -0.02% テイカー:0.12% | 無料 | なし | 無料 |
レバレッジ | なし | 2倍 | 最大2倍 | 2倍 (対応は10銘柄) | なし | 2倍 | なし | なし |
※メイカー……取引板にない価格で注文して約定させる取引、テイカー……取引板に並んだ既存の注文で約定させる取引
取扱通貨数で見ると会社ごとに差はありますが、ビットコインはどの会社でも取り扱っており、初心者で取引する場合、その点はほとんど差がないと言えます。
また、販売所の取引手数料は基本無料となっており、先に紹介したスプレッドだけが実質的な手数料となります。
違いがあるのは取引所の手数料とレバレッジの有無です。
手数料については販売所と同じくスプレッド以外の取引手数料が無料のところや、注文方法によって手数料が設定されているところもあります。
レバレッジについては対応する会社なら2倍までの取引が可能ですが、通常の取引よりは対応する銘柄が限られることもあります。
これら以外にもその他の手数料や各種サービスでも違いはありますが、もしも仮想通貨取引所を選ぶ場合は取引や手数料面に関わる部分に注目してみてください。
仮想通貨は様々な場面で活用される可能性のある通貨
仮想通貨の項目についてまとめていきます。
- 不特定の者に対する支払い及び交換が可能、また法定通貨や他の仮想通貨との交換が可能で、電子データ間で取引できるもの
- 多くの仮想通貨は中心となる管理者が存在せず、発行上限が設けられている
- ビットコインとそれ以外のアルトコインを合わせて1,000種類以上の仮想通貨がある
- 時価総額が最も多いのはビットコイン(BTC)、次いでイーサリアム(ETH)
- 活用法としては第三者を介さない送金、買い物の決済、投資・取引がある
- メリットとしては少額の投資から大きな利益を得られる可能性があり、24時間取引できる
- デメリットとしては下落の幅が大きく、サイバー攻撃や情報流出によって不正利用される可能性がある
- 仮想通貨の売却や使用によって利益が生じた場合、課税対象になることがあり、確定申告する必要がある
- 仮想通貨取引所では利用者と取引所の取引となる「販売所」と利用者同士の取引となる「取引所」から仮想通貨を購入できる
仮想通貨は電子データという法定通貨とは異なる形であるだけでなく、特徴や活用方法も違った面を持っています。
上手く活用すればスムーズでお得な支払いや取引が可能であり、大きな利益を得られる可能性もあるので、今後も注目の通貨です。