債務整理

自己破産ができない理由と解決法についてのすべてを解説します

自己破産が出来ない理由。できない理由と解決法とは

ギャンブルや浪費での借金は、自己破産ができないと聞いて困っている人は多いのではないでしょうか。

自己破産は、支払い能力がなく手続きに協力的であれば、ほぼすべてのケースで免責が得られます。

虚偽の申告や調査に協力的ではない場合は免責がおりるのが困難になるため、素直に応じるのが良いでしょう。

自己破産手続きは債務者の経済的更生をはかるのが目的であり、単純に借金を帳消しにしてもらおうという制度ではありません。

これまでの行いを反省し、やり直す意思が必要です。

そのことを踏まえ、本記事を参考にしてください。

この記事でわかること
  • ギャンブルや浪費での自己破産はできないと言われているが、実際は裁判所の裁量で許可されるケースが多い
  • 自己破産にかかる費用は、分割や立て替えができる制度がある
  • 免責が許可されても、税金など支払いが免除にならないものがある
  • 自己破産ができない場合は、個人再生など他の債務整理で支払いの負担が減らせる
  • 無料で弁護士相談や紹介をする制度がある

自己破産ができないケースは8種類

自己破産ができないケースとして、免責不許可事由の該当が挙げられます。

自己破産では破産手続きと免責手続きがあり、免責されてはじめて借金がなくなります。

  • 破産手続き 財産などを処分し、お金に換えて債権者へ公平に振り分ける
  • 免責手続き 破産手続きが終わり、裁判所が破産者の債務を帳消しにしてよいかを判断する

免責不許可事由とは裁判所から免責許可が出ないケースのことを指し、虚偽の申告や自己破産を前提にわざと借金をするなどの場合には、免責が認められないように法律で定められたものです。

ここでは、自己破産が認められないケース8種類についてまとめました。

浪費やギャンブルなどの借金

収入とは明らかに不釣り合いな浪費、ギャンブルなどを繰り返した場合は、免責不許可事由に該当します。

破産法第252条4項で、浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したことと表記されています。

具体的には以下の行為です。

  • パチンコ、競馬などのギャンブル
  • ブランド品の購入
  • 株やFXなど
  • ホストやキャバクラ通い

これらに加えて破産手続きに非協力的反省している様子が見られない等があると、自己破産となるのは非常に厳しくなります。

裁量免責

免責不許可事由に該当するケースでも、裁判所による裁量で免責が認められることを裁量免責といいます。

これまでの行いを反省し手続きに協力的であれば、ほとんどのケースで免責が受けられます。

(破産法第252条2項)

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続き開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

e-GOV法令検索 破産法より

借金の金額が100万円未満と少なく支払い能力がある

債務の支払いが可能と判断された場合、自己破産は適用されません。

目安としては、就業していると100万円以下、無職や生活保護の場合は100万円に満たなくても自己破産が適用される可能性があります。

100万円以上の場合は、収入や資産がなく返済期日を過ぎていても借金を返せない状態です。

つまり客観的に見て、返済が難しい状況であると判断されなければなりません。

一方で、就業していなくても相続した遺産が借金の額を超えている場合は、自己破産はできないとみなされます。

クレジットカードなどで商品を購入して換金した

クレジットカードなどで商品を購入し、それを売って収入にしていた場合も免責不許可事由に該当します。

この行為は免責不許可事由の以下の行為に当たるためです。

  • 支払い不能後の処分行為
  • 詐術による信用取引

そもそもクレジット枠の換金は違法行為となるため、してはいけません。

業者に依頼して換金をした場合、実質的には業者がカード利用者に対して現金を融資しているのと変わらないのです。

これは貸金業法に違反する脱法行為として、摘発される可能性があります。

摘発までいかないにしても、クレジットカードでの換金がカード会社に発覚すると、利用停止などの処置を受ける可能性があります。

財産を隠している

詐欺破産罪が成立する。財産を隠している

自己破産において、以下のように財産を隠すことは免責不許可事由にあたります。

  • 申立書類に虚偽の記載をして財産を隠す
  • 意図的に破損させ、財産の価値を下げる
  • 財産を他人名義に変更する

自己破産を申し立てると財産の調査が入り、裁判官との面談や破産管財人が口座や郵便物まで全てを調査します。

財産隠しが発覚した場合、免責がおりないだけではなく詐欺破産罪が成立してしまい、

10年以下の懲役や1,000万円以下の罰金などのペナルティを受けるおそれがあります。

どうしても残したい財産がある場合は、弁護士に相談して他の借金整理方法を考えたほうが良いでしょう。

一度も返済していない借金がある

返済をしないつもりで借金をした場合、免責不許可事由に該当します。

免責に対して、債権者が異議を申し立てる可能性があるからです。

破産を前提に返済するつもりがなく借りるなど、悪質な場合は免責の許可はおりません。

  • 返済できないことをわかっていて借金をした
  • 自己破産の費用捻出のため借金をした
  • 近く自己破産をするのをわかっていたが借金をした

返済する気がなかったわけではなく、自転車操業状態で他の返済へ回していたなど、やむを得ない事情の場合は裁量免責となる可能性があります。

7年以内に自己破産している

1回目の免責許可から7年以内の自己破産手続きは、免責不許可事由にあたるとして原則として免責されません。

さらに2回目の自己破産となると裁判官との面談で、なぜ再び借金をしたのか、どうして返済ができなくなったのかなどの経緯について詳しい説明が必要です。

より厳しい調査のため、管財事件として扱われ破産管財人が選任される可能性が高くなるでしょう。

したがって弁護士費用の他に引継予納金が必要となり、多額の費用がかかります。

ただし、以下の事情によっては裁判所が裁量免責によって免責を認める場合もあります。

  • 病気で働けなくなった
  • リストラされ職を失った
  • 家族の治療や介護でやむを得ず借金をした
  • 親族や知人の連帯保証人になった
  • 離婚をして養育費を支払ってもらえなかった

免責の許可が難しいと思われる場合は、自己破産ではなく任意整理や個人再生を検討する必要も生じてきます。

同じ理由で2回目の自己破産をする

自己破産をする理由が1回目と2回目とで同じ場合、免責が認められるのは非常に厳しくなります。

一度目と同じ理由で免責を希望するということは、反省していないとみなされる可能性が高いからです。

特に、ギャンブルなどの免責不許可事由であった場合は非常に困難になります。

そのため、2回目の自己破産手続きや裁判官との面談においては、反省が伝わるように真摯な態度で臨むのが重要です。

さらに、管財事件になる可能性が高く非常に厳しく調査されます。

自己破産をしてから7年以内の場合と同様に、破産管財人が選任される可能性が高く、費用の負担も大きくなります。

自己破産手続の予納金が支払えない

自己破産を申し立てる時、裁判所に対して一定の手続き費用を支払いますが、この予納金を支払えないと自己破産手続きができません。

費用を捻出する方法ですが、弁護士に破産手続きを依頼した時点で債権者からの取り立てが止まります。

破産申立てまでの間は準備期間があるため、それまで返済していた資金を予納金の積立てに充てます。

債務者自身での資金管理は難しいと考えられるため、依頼した弁護士に毎月預けて管理してもらう方法を取る場合が多いです。

積立てが完了した時点で、自己破産の申立てを開始すると予納金が支払えます。

数は少ないのですが、予納金の分割を認める場合や予納金が準備できるまでの数ヵ月間、手続きを保留してくれる裁判所もあります。

自己破産にかかる費用の相場は30万円から80万円

支払いに困る場合も少なくない。自己破産にかかる費用

自己破産には、弁護士費用のほかに裁判所への手続き費用が必要となり、総額はおよそ30万円から80万円といわれています。

予納金のある無しで費用が大きく変わりますが、支払いに困る場合も少なくないでしょう。

収入基準などの審査が必要となりますが、費用の立て替えをする制度や分割払いに対応しているところもあります。

ここでは費用の内訳と、支払いに困った時の対処法を解説します。

自己破産にかかる費用の内訳

自己破産手続きでは、引継予納金があるかないかによって費用が大きく変わります。

この中で大きいのが引継予納金ですが、破産者の財産の調査や管理、処分などを担当する破産管財人への報酬に充てられます。

自己破産には破産手続きと免責手続きがあるのは前述しましたが、破産手続きが必要な場合に破産管財人がつきます。

破産者から代理人弁護士を通じて、破産管財人へ引き継がれることになるため、引継予納金と呼ばれます。

引継予納金の金額は、破産手続きの内容によって変わります。

手続きの種類予納金相場
同時廃止事件1〜3万円程度
少額管財事件20万円程度
管財事件50万円程度

引継予納金を支払うケースと支払わないケース

引継予納金とは、破産者から代理人弁護士に預けられ、代理人弁護士から破産管財人へ引き継がれる予納金のことです。

引継予納金は破産管財人の報酬に充てられるため、管財事件の有無によって支払いも変わります。

破産者に一定の財産がある場合、その財産を換金して債権者に配当する手続きをします。

一方で財産がない場合は同時廃止となり、財産に関しての調査や分配は必要が無くなるため、引継予納金は必要ありません。

以下、同時廃止と管財事件について詳しく解説します。

同時廃止

同時廃止とは、破産手続きにおいて破産者の財産が少ないのが明らかな場合に、破産手続き開始と同時に終了を決定することを指します。

自由財産を除いて20万円以上の財産、現金33万円以上の財産がない状態が対象です。

この場合財産の調査等をする破産管財人は不要となり、引継予納金も支払う必要はありません。

破産手続きには様々な費用がかかり、費用の捻出ができなければ手続きを進めるのは不可能です。

したがって、開始時点で破産手続きを進めるだけの財産すらないのであれば、破産管財人を専任するのは無意味になります。

管財事件

管財事件となるのは、破産者が一定の財産を所有している場合や財産隠しをしている可能性があると判断された場合です。

東京裁判所の例ですが、差し押さえ可能な20万円以上の財産がある場合は管財事件として扱われる可能性があります。

破産者の財産の調査、財産を競売等にかけて換金し債権者に分配するなどの作業を破産管財人が行い、報酬として引継予納金を支払う必要があります。

その他弁護士に依頼して自己破産手続きを行う場合は少額管財事件を選択可能であり、通常では50万円程度かかるとされている費用が少額管財事件となった場合は、20万円程度です。

代理人弁護士が破産手続きで行われる作業の一部を代わりに行えるのが理由とされているため、個人で自己破産の申立てをした時は少額管財事件としてもらえません。

引継予納金は4回までの分割が可能

引継予納金は原則として一括払いとなりますが、東京地方裁判所本庁の場合は4回までの分割払いが認められています。

各裁判所により対応が変わるため、問い合わせが必要です。

しかし、自己破産を依頼しても申立てのために必要な書類の準備等で数ヵ月ほどかかるのが通常であり、即時に手続きが開始されるわけではありません。

多くのケースでは弁護士に依頼した後、取り立てが止まった状態で予納金の積み立てをします。

破産手続き開始と同時に予納金が支払えるよう、準備をできる期間があるのです。

法テラスは条件付きで分割が可能

法テラスでは弁護士や司法書士への依頼費用を立て替え、分割で返済できる扶助制度があります。

無職で収入がなかったり生活保護を受けていたりしても、以下の条件すべてに当てはまる場合に審査を通過すると費用の立替が可能です。

  • 収入等が一定額以下であること
  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  • 民事法律扶助の趣旨に適すること

2週間〜1ヵ月の審査を経て、民事法律扶助制度の利用が許可されるため、すぐに弁護士に対応してもらいたい場合には対応できません。

事情によっては相談が可能ではありますが、早めに準備をして申し込みや問い合わせを行なうのをおすすめします。

収入要件とは

法テラスでの立て替えを依頼するにあたって収入に一定の基準が設けられており、この基準額を下回る場合に限り費用立替制度への申し込みが可能です。

配偶者と離婚裁判中の場合は、収入の合算はしません。

申込者等と同居している家族の収入は、家計への貢献の範囲で申込者の収入に合算します。

人数手取り月収額の基準
1人182,000円(200,200円)以下
2人251,000円(276,100円)以下
3人272,000円(299,200円)以下
4人299,000円(328,900円)以下

東京、大阪など生活保護一級地の場合()内の基準を適用し、以下に同居家族が1名増加する毎に基準額に30.000円(33,000円)を加算します。

家賃や住宅ローンを負担している場合は、上記の手取り収入に次の額を加える金額以下であれば基準を満たしたとみなされます。

単身41,000円
2人家族53,000円
3人家族66,000円
4人家族71,000円

例えば、賃貸住宅に住んでいる3人家族の場合、毎月の手取り収入が272,000円に66,000円を加えた338,000円以下であれば利用できる形となります。

資産要件とは

申込者及び配偶者が、自宅などを除く不動産や有価証券等の資産がある場合に、資産の合計額が下記の基準以下でなければ制度を利用できません。

収入基準と同様に、同居家族の人数によって金額の基準が異なります。

配偶者と離婚事件で関わっているときは、資産の合算はせずに基準額の算定をします。

人数資産合計額の基準
1人180万円以下
2人250万円以下
3人270万円以下
4人300万円以下

生活に必要である以下に関しては、上記の資産には含まれません。

  • 住宅
  • 農地
  • 動産
  • 医療費
  • 教育費
  • 冠婚葬祭費

無料相談の段階までは、申込者本人の現金や預貯金の金額のみで判断されるため、財産を所有していても相談が可能です。

しかし、扶助制度の利用時には財産や資力に関する書類を提出し審査を行なうため、その時点で審査が通らない場合もあります。

審査に必要な書類

申込者及び配偶者の、資力を証明する書類の提出が必要です。

  • 直近2ヵ月の給与明細、賞与明細
  • 源泉徴収票
  • 課税証明書又は非課税証明書、所得証明書
  • 直近1年分の確定申告書の写し、収受印のあるもの
  • 援助申し込みから3ヵ月以内に発行された生活保護受給証明書
  • 基礎年金番号がない、直近の年金証書や通知書の写し
  • その他これらに準ずる書類

分割払いをするための口座に係る資料も添付します。

  • 自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写し
  • 口座情報が確認できる書類の写し

その他、資力申告書と世帯全員の住民票の写し、事件に関する書類も必要です。

生活保護を受けている場合

生活保護を受けている人は、自己破産が確定するまでの間、法テラスへの返済は猶予されます。

支払いが先延ばしになるため、その間に資金を貯められるうえ、毎月3,000円程度からの返済も可能です。

さらに、生活保護を受給中では返済は困難であるため、免責が許可されると法テラスへの立替金の免除を申請できます。

保護費を借金の返済に充てるのは認められていないため、受給中の借金整理については自己破産以外は受理される可能性は低いといえます。

なお自己破産と生活保護の関連性はなく、借金がある状態で病気になり働けなくなった等の事情がある場合も、どちらを先に行っても問題はありません。

弁護士事務所も分割に対応している所が多い

着手金に関しては一括払いで支払うのが原則ですが、報酬金については分割払いに応じている法律事務所も多いです。

事務所によっては着手金不要だったり、破産費用に関しても柔軟に対応していたりするところもあります。

費用の捻出が厳しい場合は、着手金ができる限り安い法律事務所を選ぶことを検討しましょう。

さらに、自己破産を弁護士に依頼した時点で即時支払いが止まるため、そこから積立をして費用に充てるのも可能です。

まずは弁護士に相談をして、確実に費用を支払えるよう対策をしましょう。

支払いが免除にならないものもある

支払いが免除にならない。非免責債権

自己破産をするとすべての支払いが免除されると誤解をされがちですが、免除がされない非免責債権があります。

破産手続き中は非免責債権であっても一時的に支払いは停止しますが、免責が決定し支払いを求められた場合、応じなければなりません。

その他、税金に関しては支払いを優先しても免責が得られなくなることはありません。

賠償金も非免責債権とされていますが、単なる過失とみなされた交通事故に対する損害賠償等であれば免責がおりる可能性が高いでしょう。

しかし、危険運転致死傷罪が成立する行為、あるいは殺傷目的に発生した事故に対する被害者への損害賠償請求権では非免責債権と認定される可能性が高くなります。

税金や社会保険料

自己破産をしても、税金や保険料は免除になりません。

  • 住民税 
  • 所得税
  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 相続税
  • 国民健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 下水道料金

これらの負債を滞納している人は、一旦は支払いがストップしますが、自己破産手続き以降に支払う必要があります。

破産手続の際に不動産は手放すことになりますが、固定資産税は毎年1月1日時点での不動産の所有者に支払い義務があります。

他にも電気やガスなどの公共料金は免責対象ですが、下水道料金は自治体への収入と定められているため例外です。

しかし、支払いができないからといって放置をしていると、延滞税が加算されます。

税務署などに支払いの意思を示し、事情を説明すると分納が認めてもらえるケースもあります。

悪意がある不法行為によって発生した損害賠償金

例えば不注意で車に傷をつけてしまった場合は、悪意がない行為とみなされ修理は免除されます。

しかし金属などで故意に車を傷つけた等の不法行為については、修理費の免除はされません。

悪意とは、詐欺や横領など積極的に害を加えるという意欲であるとされています。

つまり交通事故において、わき見運転等の単なる不注意ではなくあおり運転や飲酒運転のように自ら他人に害を与える行為をしてしまうと、免責がおりない可能性があるということです。

ちなみに、離婚をした際の慰謝料に関しては悪意の有無が曖昧になってしまう傾向にあるため、状況によっては損害賠償金の扱いになる場合があります。

重大な過失を加えてしまった場合の損害賠償金

悪意のある無しに関わらず、重大な過失により第三者の生命や身体を害した場合の損害賠償は免責になりません。

過失の程度がひどく、故意と同じくらいに責任が重いと考えられる場合に重大な過失とみなされます。

例えば追突事故で携帯電話を見ていて前の車に気づかなかったという場合、故意に損害を与えているわけではありませんが、重大な過失という面では該当することとなります。

破産者よりも、被害者の保護が優先されるためです。

ちなみに、車の物損事故については生命や身体に害するものではないため非免責債権にはならず、支払いが免除されます。

扶養される親族などがいる場合の生活費

扶養される親族、支払いを受ける親族を保護するという観点から免責にはなりません。

夫婦で暮らしていくための生活費や医療費、婚姻費用といった結婚生活のために必要となる費用が対象です。

婚姻費用とは、婚姻によって発生する費用のことであり、結婚してから離婚までの間に夫婦生活を維持していくために必要な費用を指します。

この婚姻費用分担は法律上で義務とされており、仮に免責が許可されたとしても婚姻費用は継続して支払わなければならないのです。

子どもがいる場合の養育費についても、支払いの義務があり同様の扱いになります。

自己破産しない方が良い場合は借金の減額をする

自己破産しない方がいい場合。借金の減額

自己破産をしたいと考えていても、実はしない方が良いケースがあります。

破産手続きをしても支払いが残ってしまったり、手続き中の職業制限によって収入の手段を失ってしまったりしては、すべてが無駄になってしまいます。

職場によっては、事情を伝えることで手続き中は部署を変えてもらうなど配慮されるケースもありえますが、自己破産の手続き中とはなかなか言いづらいものです。

自己破産をしても生活の立て直しができなかったり、そもそも手続きをするのに生活や収入に大きく影響が出てしまう場合は、別の方法で解決を目指すのが良いでしょう。

債務が「非免責債権」ばかりで手続きをしても支払いが残る

破産手続きをしても免責されずに借金が残る可能性があり、残った金額によってはほかの債務整理を考えた方が負担が少なく済みます。

借金を圧縮する個人再生や、債権者を選んで借金を整理できる任意整理がおすすめです。

個人再生手続きでは、全債権者への返済金額を減らして借金を最大5分の1まで圧縮でき、原則3年間をかけて分割で返済します。

一方任意整理は、債権者に対し将来の利息のカットや支払い可能な返済額への交渉を弁護士が行います。

裁判所は通さずに任意の債権者との交渉が可能なため、裁判所での手続きである自己破産や個人再生と比べて手続きが簡単になるでしょう。

手続き中の職業や資格の制限により生活が成り立たない

自己破産申立をしてから免責が確定するまで、職業の制限があります。

職種については後述しますが、職場によっては部署を変えてもらうなどの対応をしてもらえる場合があります。

大抵は半年程度で制限がなくなりますが、復権まで時間がかかるケースでは、その間収入が途絶えるため生活に大きく影響するでしょう。

自己破産手続きをスムーズに進められると良いのですが、内容によっては年単位でかかってしまう場合もあるため、弁護士に相談し別の選択をしてください。

自宅や車を残しておきたい

自宅や車を所有していて手放したくない人は、その他の借金を5分の1まで圧縮できる個人再生をおすすめします。

個人再生の特徴は、生命保険や自宅、車などの資産を持ったまま手続きできるところです。

住宅に関しては住宅ローン特例により、下記の条件を満たせばそのまま自宅を所有し続けられます。

  • 本人が所有している
  • 建物の床面積の2分の1以上が居住用である
  • 現在、本人が居住している状態である

車については、ローンの支払いが終わっていると持ち続けられます。

ローンの支払いが途中であり、車の所有権がローン会社にある場合は、原則としてローン会社が引き揚げる形になります。

ちなみに、個人再生手続きにより車が回収されたとしても、現金であれば再度の購入が可能です。

自己破産ができない時の対処法は3つ

自己破産が出来ない時、対処法は3つ

破産手続きをしても、免責不許可事由により免責がおりない場合があります。

しかし、全く対処法がないわけではありません。

即時抗告という異議申し立てをしたり、個人再生や任意整理による解決を目指したりするのも1つの方法です。

個人再生では職業の制限が無いため、自己破産は無理でも個人再生で解決できたという人は多くいます。

気をつけておきたいのは、保証人がいるため自己破産ができない場合は、個人再生もできない点です。

そういったケースでは、任意整理を選択し、保証人がついている債務を外して借金を整理する方法を取るのが最適でしょう。

その他、費用で困っている場合は法テラスによる扶助制度を利用し、資金の工面が可能です。

異議申し立てをする

免責不許可決定に際し、自己破産を申し立てた地方裁判所を管轄する高等裁判所に対して、即時抗告という異議申し立てができます。

自己破産で免責の許可がおりない場合、すみやかにその理由を確認する必要があります。

即時抗告ができる期間は免責不許可決定から1週間以内となるため、弁護士に相談し早急に法的な根拠と資料を用意しなければなりません。

ちなみに、裁量免責すら認められないケースというのは、全く反省の色が見られなかったり手続きへの協力が全く無かったり等の極端な場合が多いです。

そのため、即時抗告をしても免責が許可される可能性は低いことを念頭に置いておきましょう。

個人再生や任意整理をして借金を減らす

自己破産で免責が許可されないのであれば、別の債務整理手続きの選択肢もあります。

借金の全てがなくなるわけではありませんが、返済ができる状態まで大幅な減額が可能です。

個人再生には免責不許可事由がないため、収入が安定していると借金の理由に関わらず減額ができます。

ただし、一部の債権者への支払いや財産隠しは禁止されているため、こういった理由で免責がおりなかった人は真摯に対応しなければなりません。

任意整理は代理人弁護士と債権者の直接の交渉により、債務を減らしてもらったり支払いを調整してもらったりする手続きです。

裁判所を通さないため、自己破産や個人再生よりは難しくない手続きといえます。

費用を用意できない時は法テラスの利用や分割払いの依頼をする

自己破産の費用を用意できないというケースもあります。

弁護士に依頼した時点で積み立てをする、分割払いをお願いするなどの方法もありますが、そもそも収入が極端に少ないケースではそれも厳しいでしょう。

特に費用の大きい引継予納金と、弁護士への報酬は捻出するのが困難です。

そのため費用が支払えない事情がある場合、法テラスで立て替えてもらえる扶助制度があります。

審査があるため全員が対象になるとは限りませんが、無職や生活保護の人は立て替えてもらえる可能性が高いです。

費用でお困りの方は、一度相談してみると良いでしょう。

自己破産手続き前後に制限されるものがある

自己破産の手続きが開始すると、一時的に制限されるものがあります。

破産者は破産管財人に対し、所有する財産の内容についていつでも説明できる体制でいなければならないからです。

裁判所や破産管財人は、破産者の財産調査や管理を行なうために、居所を把握する必要があります。

許可なく旅行などで不在にしてしまうと非協力的とみなされ、免責不許可事由に該当してしまうおそれがあります。

引っ越しや長期の旅行をする時は、事前に裁判所の許可をもらわなければなりません。

職業に関しての制限は、通常は自己破産申立後半年程度とされています。

一生その職業に就けなくなるわけではないため、上司に事情を話して所属部署を変えてもらったり、一旦退職して再雇用してもらったりと対策は可能です。

長期旅行や海外旅行は認められない

破産手続き中は、長期旅行や海外旅行は認められません。

どうしてもという場合は、事前に破産管財人の同意や裁判所の許可を取る必要があります。

法事などでの帰省などやむを得ない理由があると良いのですが、娯楽目的であれば許可されない可能性が高いです。

上記にもある通り、許可なく旅行をするということは、手続きに関して非協力的とみなされても仕方がないでしょう。

必要な時にいつでも調査へ協力できる体制でなければ、手続きも滞ってしまいます。

免責が許可されると制限はなくなるため、手続き後は自由に旅行ができます。

郵便物は破産管財人へ転送される

破産開始手続きから終了までの間、破産者への郵便物を破産管財人に転送し、内容の確認をし、破産者が財産を隠していないか等を調査されます。

郵便物の中にはクレジットカードの支払明細、税金についての通知や保険の支払いや更新に関する通知があり、郵便物を確認して財産状況や取引関係を把握するのです。

債権者や財産に漏れがないかを調べ、公正に手続きを終了させるのが目的であるため、郵便物は確認後返却されます。

返還のタイミングは、破産管財人の裁量により、こまめに返還される場合やある程度まとめてからの場合などさまざまです。

ちなみに、制限はあくまでも郵便物であり宅配便などの配達物は対象ではありません

一定期間就けない職業がある

自己破産手続きが開始されると、一定期間制限がかかる職業があります。

その代表的なものは以下のとおりです。

  • 貸金業者の登録者
  • 質屋を営む者
  • 旅行業務取扱の登録者や管理者
  • 生命保険募集人
  • 警備業者の責任者や警備員
  • 建築業を営む者
  • 割賦購入あっせん業者の役員
  • 下水道処理施設維持管理業者
  • 風俗業管理者
  • 廃棄物処理業者
  • 調教師、騎手 
  • 士業、公務員の委員長や委員、団体企業の役員

金銭や資産に関わる職業は制限される傾向にあります。

この制限はずっと続くものではないため、部署替えや一時退職などで乗り切れる場合もあります。

クレジットカードが作れない

自己破産手続きを開始したと同時に、契約中のクレジットカードは使用不可となり、その後新たなカードも一定期間作るのが難しくなります。

クレジットカードを作る際、信用情報を元に審査をしますが、この信用情報には借り入れや返済状況だけではなく事故情報が記録されます。

信用情報とは、銀行やクレジットカード会社、消費者金融などの金融機関が業界ごとに作っているデータベースを指します。

自己破産をすると信用情報に引っかかり、新たにクレジットカードを作ったり借金をしたりなどはできなくなるでしょう。

免責がおりてから5年〜7年は、クレジットカードの審査を通すのは非常に難しくなります。

自己破産について無料で相談できる場所

早いに越したことはない。無料で相談できる場所

自己破産を考えている人が、無料で相談できる窓口があります。

そもそも毎月の返済もままならないのに、数千円でも費用がかかるのであれば二の足を踏んでしまうでしょう。

そうしている間にも借金は膨らんでしまうため、相談するのであれば早いに越したことはありません。

無料相談は1回限りで30分間の所が多いため、質問したいことを予め箇条書きにするなど準備をし、有効に活用してください。

その他、債権者名や借入金額、現在の返済の状況なども分かる範囲で構わないため、準備をしていくとスムーズに相談が進みます。

法テラスでは条件がありますが、3回まで無料相談をしてもらえる場合もあります。

法テラスは条件を満たすと3回まで無料

法テラスでは、トラブルの内容に応じて無料法律相談を案内してもらえます。

面談のほか、電話でも相談できます。

収入や預貯金が一定額以下であること等、いくつかの要件を満たす必要がありますが、同じ問題について3回まで相談が可能です。

要件を満たす場合に弁護士費用の立て替えもしており、分割返済も可能なため費用面で不安がある人は早めに相談しましょう。

一回の時間は30分程度、法テラスと契約している弁護士や司法書士が対応します。

ただし、特定の弁護士の指定はできません。

弁護士会や弁護士事務所で無料相談をしている場合がある

全国には、弁護士の自治組織である弁護士会が設置されています。

それぞれの弁護士会では、定期的に無料法律相談を実施していますが、相談内容については弁護士会によって異なるためお問い合わせください。

弁護士事務所でも、無料相談を設けているところが多いです。

相談できる時間は初回30分のみというのがほとんどですが、事務所によって変わってくるため、問い合わせてみると確実です。

インターネットや電話での予約が必須となるため、各地の弁護士会のホームページを確認してうえで予約しましょう。

区役所や市役所の無料法律相談を利用する

区役所や市役所では、法律相談を無料でおこなっています。

時間や曜日が決まっており、予約制である場合が多いため、電話やネットで確認してみると良いでしょう。

直接の面談となり、電話や手紙では受け付けていない場合が多いです。

弁護士の指定ができないため、合わないと感じることもあるでしょうが、手続きだと割り切れるようなら問題ありません。

筆者の場合は市役所の法律相談で弁護士を紹介されましたが、合う合わないよりも早く借金を整理する方が大事だと考え依頼しました。

その結果、費用も安価で済みましたし手続きも滞りなく終了しました。

日本クレジットカウンセリング協会は費用がかからない

日本クレジットカウンセリング協会は公益財団法人であるため、費用がかかりません。

消費者保護の立場から公正、中立なカウンセリングを行います。

カウンセリングで任意整理が適していると判断され、相談者が希望する場合は協会の介入によって弁護士費用は無料です。

同時並行で家計カウンセリングも行われ、生活を立て直すためのサポートを受けられます。

カウンセリングは、弁護士会から推薦を受けた弁護士カウンセラーと、協会の消費生活関係の資格を持つアドバイスカウンセラー2人1組で行います。

さらに、経済的な助言にとどまらず、心理的な問題を抱えた相談者への支援も行なっています。

日本貸金業協会は借金全般の相談が無料

日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センターに借金に関する悩みを抱える人に向けて、無料の相談窓口が設置されています。

相談者の状況によって、専門の相談員が債務整理の方法やカウンセリングによる生活再建の支援が可能です。

債務整理の方法や適切な相談窓口、契約内容に至るまで、借金に関する相談全般を受け付けています。

その他ギャンブルや買い物等の依存症により貸付を制限したい時に、貸付自粛制度の申し込みが可能です。

信用情報機関に登録し貸付を行えなくする制度で、強制的に借金をできなくすることで、多重債務の防止を図ります。